プロジェクト進捗の管理手法として、時間・リソース・予算を一度に管理する「アーンド・バリュウ分析」によるプロジェクト性能を管理する手法を、PIMBOKが紹介していますが、リソース・予算を展開し、時間データを追加したデータベースを構築して、毎月、データの時間ステータスを更新してゆくのは大変な労力とコストを必要とします。 さらに、遅れが発生してきた場合、その遅れを分析し、リカバリー・スケジュールを計画し、該当リソースの増加を図る、或いは、予算(タスク)の前倒しを図る作業を「アーンド・バリュウ分析」で行うことは、不可能に近いと考えています。 市販の高級なスケジューラー・ソフトは、クリテカル・パス分析だけでなく、「アーンド・バリュウ分析」をする機能を持っていますが、タスクのリレーション(コンストレイン)でさえ取らない、バーチャート作成にしか使われていないのが多いのではと想像をしています。
それでは、旧式なバーチャート・スケジュールだけで、プロジェクト進捗管理が出来るのかとの問いに対する回答は、それは出来ないと言っていいでしょう。
現実的で、実用的なプロジェクト進捗管理手法の概要を紹介します。
1. |
スケジュール進捗管理をするためのデータを構築する。 WBS (Work Breakdown Structure)と言い、第一段階サマリー、第二段階サマリー、次に詳細項目程度の展開が理想的です。 設計であれば、図面・仕様書のリストを作成し、その書類の難易度により、各図面に重み付け(Weight)を割り振り、予算を比例配分します。 購入品であれば、各予算金額を重み(ウエイト)にすれば良いでしょう。 工事も同様に、各工事項目を展開して、予算金額を割り振り、重み(ウエイト)にすれば良いでしょう。 このデータは、細かいほど、手間はかかりますが、進捗管理の精度は上がります。 データベース化はエクセルなどのスプレッドシートで十分です。
|
2. | スケジュールを計画する。 設計、購入品、工事のタスク(項目)を決め、きちんとしたスケジューラー・ソフトを使い、全てにリレーション(コンストレイン)を取りながらスケジュールを計画します。 「アーンド・バリュウ分析」では、タスクは、上記の「スケジュール管理をするためのデータ」をそのまま使うことが原則でしょうが、そのようにしたらスケジュールは失敗作になるでしょう。 第二段階サマリーを基本的なタスクとし、スケジュールの大きな要因となる詳細項目の一部を追加した程度をスケジュール・タスクとするのが理想的です。 クリテカル・パスはソフトが自動的に計算し構築しますが、一度では理想的なパスにならないものです。リレーション(コンストレイン)を修正しながら、理想的なクリテカル・パスになるようにスケジュールを計画します。 |
3. | スケジュール進捗管理をするためのデータを完成させます。
スケジュールが完成したら、そのスケジュールを睨みながら、スケジュール進捗管理をするためのデータ全てに、時間データ(予定の日付)を追加します。
そして、スプレッドシート・ソフトの計算式を使って、各ウエイトと日付データから進捗率を計算させ、予定進捗カーブのグラフを作成します。
|
4. |
スケジュール進捗管理をするためのデータを用いて進捗管理をします。 プロジェクト進行に伴い、完了したデータに「完了した日付」を入力し、各ウエイトと完了日付データから計算させ、完了進捗カーブのグラフを作成します。
|
5. | 以上の予定進捗カーブと完了進捗カーブを比較することで、時間遅れと仕事量の遅れを定量的に計ることが出来ます。 |
次章で、具体的なサンプルを元に詳細を説明します。